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湯気/伊東 深水

湯気(ゆげ)

伊東 深水(いとう しんすい) 大正13年(1924)

作品解説

 大正8年に結婚したばかりの好子夫人をモデルに描かれたと言われる作品です。高めの丸髷を結い、湯上りの薄化粧を済ませた浴衣姿で袂を唇にくわえながら手拭を絞る手元を伏目がちな眼差しで見つめています。

 立ち込める湯気のぬくもりが全体のシルエットを朦朧と包み込み、浮びあがる手足の指先は何と美しく印象的でしょうか。

作家紹介

 生没年:明治31年〜昭和47年(1898〜1972)

 東京深川に生まれる。東京印刷の活版工から図案部に移り、鏑木清方に入門。明治45年(1912)巽画会第12回展に初入選、大正3年再興第1回院展に入選したのをきっかけに東京印刷を退社、画家としての道を歩み始める。4年清方主宰の郷土会が結成され、その定期展や文展、院展に相次いで入選するが、その後出品から離れ挿絵や口絵にも打ち込んだ。大正11年(1922)平和記念東京博覧会での受賞後、重なる帝展での受賞で、美人画家としての地位を確立する。

 また、自ら青衿会などの画会を結成する一方、戦後は日展で審査員をつとめ、昭和23年(1948)第4回日本芸術院賞を受賞。以後日展を中心に出品を続けて、日本芸術院会員となる。浮世絵の伝統に立ちながら現代風俗に挑んで、芸術性の高い新しい画境を築き上げた。

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