古事記や日本書紀にも登場する伝説の美女である。一説には、「木花」は山桜を指し、「開耶(さくや)」の音は「咲く」と「幸く」の意味をもち「さくら」の由来ともいわれる。近世では、上部に描かれている富士山のご神体とされ、足元には山桜である「木花」が添えられている。
「 壬生狂言の楽屋 」 (みぶきょうげんのがくや) 第9回文展出品 1915年制作 京都府立総合資料館蔵(京都文化博物館管理)
壬生狂言は京都の壬生寺で行われる「壬生大念仏狂言」のこと。面をつけた演者が笛や太鼓の囃子に合わせる形は、鎌倉時代から変わらない。
老演者の鬼女を表す三角形の鱗模様の衣装を着ていること、小僧が般若面を持っていることから、演目は「道成寺」である。また、柔和と緊張という両者の表情の対比も画に深みを出している。衣装の配置も適切で華やかな作品である。
琵琶湖の南に位置する三上山は標高は低いものの「近江富士」と呼ばれるほど山容が美しい。生活感のある庵と、整えられた畑から、のどかな山里に暮らす人々の暮らしが伺えるようである。それらを守るようにそびえる近江富士は、古来より神が宿ると考えられているのに相応しく、凛とした姿である。
楚々とした淡色の桜と菜の花の黄色、薄緑の草木が優しい色使いである。菜の花の黄色も美しい春の情景である。
「 三上山 」 1947年制作 高松宮家蔵
「 餞春 」 (せんしゅん) 第9回帝展出品 特選 1928年制作 京都市美術館蔵
「 山荘の夕 」(右隻) 1923年頃制作 平野美術館蔵