左右あわせて横幅7メートルほどもある大きな屏風です。左半分には横座りになった一頭の虎が頭をもたげて遠くを見遣っています。右半分には二頭の虎が、こちらは、一頭は立ちあがり咆哮し、もう一頭も頭を低くして何かに身構えているようです。「静」と「動」の対比です。
背景には墨で岩や多少の下草、地表と思われる線が描かれているだけです。それでも、虎たちはその太い足で、しっかりと地面を踏みしめています。空中に浮いているようには見えません。これが画家の見事な表現力なのです。また、画面いっぱいに虎を描くのではなく、余白を大きく取っています。そうすることで、虎の周りの空気をも描き表しています。左右比べると、周りの空気の雰囲気が何となく違うことに気づきます。左の「静」は、緊張感はあるものの、空気は穏やかで凪いでいます。右の「動」は、咆哮がとどろき、空気まで震えて渦巻いているようです。
西村五雲は京都で生まれ、京都で活躍した画家です。花鳥、動物を特に得意として、写生にもとづいた卓越した筆致で、生命感あふれる作品を多数残しました。