多くの人に愛されている平山郁夫(1930-2009)は、昭和5年に広島県瀬戸田町(現尾道市)に生まれました。幼少期を瀬戸内の風光明媚で穏やかな大自然の中で過ごし、豊かな色彩感覚を身につけていきます。東京美術学校(現東京藝術大学)を卒業後は被爆の後遺症に苦しみながら画風を模索し、やがて玄奘三蔵に導かれるようにシルクロードへと向かい、制作に励みました。
 本展覧会は平山郁夫シルクロード美術館(山梨県北杜市)、平山郁夫美術館(広島県尾道市)の所蔵品を中心に、海外や国内の歴史ある土地を描いた作品約50点と貴重なスケッチも展示します。名都美術館においては2002年以来の展覧会になります。造形美あふれる平山郁夫の世界をご覧ください。

《西蔵布達拉宮》 1977年 名都美術館蔵

「ポタラ」はチベットで守護神として崇められている観音菩薩の住まう地という意味を持つ。歴代ダライ・ラマの居城も兼ねており、チベットの政治・宗教・文化の中心的機能を果した宮殿である。麓から連なる階段、整然と並んだ無数の窓、紅宮と白宮の対比といった美しさと機能を兼ね備えた神聖な場所が画面いっぱいに描かれ、荘厳な雰囲気を醸し出している。

《敦煌A》1980年 平山郁夫美術館蔵

《敦煌A》1980年 平山郁夫美術館蔵

昭和54年(1979)、敦煌莫高窟が一般旅行者に開放された年の9月に、平山は初めて敦煌を訪れた。この時の感動を「各時代の特色を反映した壁画や塑像のすばらしさに、思わず目を見張った」と語っている。

《西蔵布達拉宮》 1977年 名都美術館蔵

《平成の洛中洛外(右隻)》2003年

《平成洛中洛外(左隻)》2004年

平山郁夫シルクロード美術館蔵


※後期11/18(火)〜12/14(日)に展示します。

京都について、「日本人が永い年月をかけて造りあげた芸術作品」と捉えていた平山は、「画家として、自分の眼で見た自分の生きた時代の京都を自らの手で描き残そうと考えました。そして、この町を誇りをもって次の世代に無事伝えること」を使命として、《平成の洛中洛外図》のシリーズを残した。

《平成洛中洛外(左隻)》2004年《平成の洛中洛外(右隻)》2003年 平山郁夫シルクロード美術館蔵