【特別展】小倉遊亀展－明るく、温かく、楽しいもの－

明治28年、滋賀県大津市に生まれた遊亀は、奈良女子高等師範学校（現・奈良女子大学）を卒業後、京都や名古屋、横浜、東京で教諭を務めながら独学で日本画の制作に臨みました。大正9年、安田靫彦の門下となり、「一枚の葉っぱが手に入ったら、宇宙全体手に入ります」との教えを胸に精進を続け、同15年再興第13回院展に初入選。以後、院展を舞台に活躍し、独自の芸術を開花させました。女性画家として二人目の文化勲章を受章し、105歳まで活躍を続けた輝かしい遊亀芸術を、この機会にお楽しみ下さい。

遊亀は昭和7年に女性としてはじめて日本美術院同人に推挙され、当時話題を呼びました。本作品は、その直後に発表された作品です。腰をかがめ無心に苺を摘み取る女性を自然体で捉え、活き活きとした表現が魅力となっています。

滋賀県の中山道、摺針（磨針）峠にまつわる伝説に取材しています。厳しい仏道修行に耐えかねた青年僧が帰郷の折、斧から針を磨ぎ出そうとしている老婆と出会い、自らの怠惰を恥じて再び修行を積み高僧となった物語を作品にしました。

透明感のあるガラスの花器に生けられた山ツツジと三宝柑が爽やかな印象を与える作品です。遊亀が残した作品の約7割が、本作品に代表される静物画です。モティーフの組み合わせを楽しみながら筆を運ぶ遊亀の姿が目に浮かびます。

遊亀が64歳のときに描いた本作品は、息子夫婦を主題にしています。皿に乗せたメロンを手にする嫁と椅子に座り手元の本に目を落とす息子。何気ない日常を表現することで、家族と過ごす幸せな時間を表現しています。

雄大な富士を写した大作です。青空に映える真っ青な富士と、黄金色の草原に日本画特有の装飾性が加味され、その奥深い色彩によって観る者を絵の世界へと誘います。

梅の木に並々ならぬ愛情を注いだ遊亀の作品には、繰り返し梅が登場します。青空を背景に勢いよく枝を伸ばす姿や、花入れに無造作に生けられた様は、いずれも温かな眼差しが感じられ、飽くことなく観察を続けた姿勢をうかがわせます。